kilometer’s

a junk space

[研究関連]  [R関連] [書評] [その他]

home


書評:『鋼鉄都市』

アイザック・アシモフ(著), 福島正実(訳), ハヤカワ文庫, 1979年 [link]

SFでありミステリィであり、つまり最高。

写真は手元にある2017年発行の27刷。これは小学校の図書館で初めて読みました。多分、あかね書房の少年少女世界SF文学全集のやつですね。思い返しながらWebの海を調べてみると、この全集はE・E・スミスの『銀河系防衛軍』(いわゆるレンズマン・シリーズですね)、H・G・ウェルズの『宇宙戦争』(トム・クルーズ主演で映画化されました)、J・ヴェルヌの『海底二万リーグ』(蛇足ですが1リーグは3マイルなので換算すると海底六万マイルになります。Wikipediaによると実際、そういう邦題がつけられたこともありましたが『海底二万マイル』が広まったという経緯があるそうです)などなど素晴らしいラインナップでした。その中でもこの『鋼鉄都市』は燦然と輝いていました。

この本は何度も何度も買っています。読んでボロボロにする、引越しの整理で処分する、友人に貸す、友人?にも貸す、後輩にも貸す、貸しているうちに見かけて読みたくなってまた買う。とかやっていたのでいい加減にしようということで格好いい表紙の版を見かけた機会に「絶対保存棚(貸さない・売らない・捨てない)」を作ってそこに格納された第1号がこの本です。文句なしのオールタイム・ベスト・オブ・ベスト。

手元の本の翻訳は1979年だそうですが、舞台の中で使用される細かいガジェットがまったく古臭くないというのは驚くべきことです。それは文字表現が持つスタイリッシュな魅力の1つですが、その点、この『鋼鉄都市』はアシモフの他の作品に比べても頭ひとつ抜けているように思います。僕はハリ・セルダンよりもイライジャ・ベイリとR・ダニールに憧れました。これは生きて歩き回りたい世界の嗜好かもしれません。そういう至近的視野で展開される物語の中に、「宇宙人」と「地球人」と「ロボット」が織り込まれている奥行きがたまらない作品です。

そういえば苦労して手に入れた英語版のペーパーバックも買って読んだ本なので思い入れがあります。電子書籍の普及でその辺のアクセスがよくなったのは楽しみが増えてとても良いですね。


2022年1月4日