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書評:『 信号・データ処理のための行列とベクトル』

田中 聡久(著), コロナ社, 2019年 [link]

線形代数(特に行列!)は、こうやって習いたかった。

データ処理周りの線形代数、特に行列処理の基礎的な数学をまとめて復習したいなと思って読んでみました。数学系の解説は入門と名が付いていても、文章は添えてあるだけで数式でゴリゴリ進めるというスタイルが多い中、この本は全般に渡ってとても流れがスムーズでとても読みやすかったです。

恒例の端を折ったページ紹介は写真右のようになりました。

2章の冒頭でベクトルの導入がありますが、あ、そっちから行くのか(その手があったか)とちょっと驚きました。これが、その後に出てくる行列の概念の導入と合わせて素晴らしい内容でした(3章)。

行列ってだいたい登場の仕方が唐突で、正体が分かってくるまで辛いな〜と思っていたのですが、最初にガツんとカマすと、概念的な理解がすごく進んで良かったです。こうやって線形代数を習いたかったと思いましたが、大学の線形代数の授業はほとんど記憶にない上に当時の自分の知識では、こう説明されても理解できなかったかもしれません。

確率のパート(8章)では、離散事象から連続事象への繋ぎ(図8.3)が参考になりました。先日、某所で確率の基礎について話した際に、この部分の上手い繋ぎが思い浮かばなかったので、これは参考になります。

一方、行列は写像だと看過されるのであれば、確率変数も写像だと説明していただきたかったという思いもあります。そうすることで、「これまで学んできたことがすべてつながっていく感覚」(p. 165)がより一層高まったのではないでしょうか。

勉ぶを強いられる事がなくなった今、究めるために日々、研ぎ続けていきたいものです。


2019年7月18日